■戻る■ 2ちゃんねる 電波・お花畑に戻る 元のスレッド 全部 1- 最新50  

学堂のある心象風景

1 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2009/09/15(火) 23:33:11

         . ::゜.゜。・゜゜゜゜ .
        :::.゜。 ゜・。゜゜. .  . .
            : ::.゜ ゜ ゜゜。・。゜.゜..
                  .: ::.゜゜゜゜・
              ..: :.゜゜。・。゜.゜. ...
                :::.゜。 ゜・。゜゜. .  . .
                    : ::.゜ ゜ ゜゜。・。゜.゜..
                    :::.゜。 ゜・。゜゜. .  . .
                        : ::.゜ ゜ ゜゜。・。゜.゜..
                        :::.゜。 ゜・。゜゜. .  . .
                             : ::.゜ ゜ ゜゜。・。゜.゜..

このスレは、こことは離れた次元にある世界を舞台にしています。
そこには微細なエネルギーが満ち、無数の空間が存在しています。
それぞれの空間の謎を解明し、把握・管理するための機関があり、ステーションを拠点に活動しています。

ステーションもまた無数のエリアに分かれています。
天使エリア、人間エリアのように種によって利用するエリアが異なり、
それぞれ様々な役割を果たして機関のために貢献しています。

機関は莫大な資金と人的資源、軍事力を用いて空間を発見・調査・管理していますが、
発見した空間に先住民がいることも多く、管理権を巡っての争いが絶えません。

参加者はこの世界の住人となり、自由に物語を展開させてください。

2 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/16(水) 00:05:01
《アカデメイア》
この不可思議な空間群を、僕はそう呼ぶことにした

それは少し前のこと
夢の世界《トロイメライ》はもう夜更け
沈香の煙はふわり、ふわり
遠くで烏の啼く、深更の情景
曲がりくねった沼の、芙蓉の花に波がかかる
腰のまわりの、白玉が冷たい

静かな波紋を立てて、白い竜が降り立つ
とても清らかで
僕はその背中に乗る
山を越え、奇石の断崖を越え
海を越えて
そうして僕はたどり着いた

そこにあった空間は、全貌はとてもわからない
信じてくれる 人もない
広大かつ複雑な一つの空間なのか、
それぞれの区域が独立しているのか
わからない

竜が降りたのは、夜の菩提樹の並木道
寒兎の光がはらはらと
桂の樹はしゃららん
それを起点にまっすぐと
たどり着いたのは、夜空の下のテレポート・ステーション
竜は小さくなって、肩の周りをちょろちょろ
ポートで意識を集中させると、この驚くべき空間に転送された

3 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/16(水) 00:35:03
ここは?
わあ、すごく立派な樹だな。
プラタナス?
側にいるだけで、エネルギーが伝わってくる

周りの木々も、草花も、
僕の知っているそれとは違う。
この風にも、精霊が宿っているみたいだ。
《機関》の記録に、この空間はあったっけ。



あの建物は?


木が組み合わさっている?
それなのに、どこか人工的
入ってみても、誰もいない
こんな大きな建物なのに、手入れが行き届いてる。
人はいないようだけど
浄化装置がついてるのかな?

広いエントランスだな…
吹き抜けだ
木のほら穴に入ってるみたいだ
光が入ってくる。陰も綺麗
あそこのテーブルと椅子は、なんだかカフェテリアみたいだ

エントランスの真ん中
エメラルドの光
…テレポート・ステーションか。
どこへ繋がっているんだろう

4 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/16(水) 00:42:33
【根源の部屋】

この部屋…
木が組み合わさった建物なのに、
ここは石造りなのか
でも、壁には蔦が絡んでる
部屋の真ん中にあるのは、水鏡?


    とくん…

           とくん…

あ…
なんだろう
体を組成している全ての要素が
命を持って主張しているみたい
それとも、僕が目を向けられるようになっただけ?
どこへ繋がるんだろう

5 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/16(水) 01:16:26
【エントランス】

びっくりした
自分の中を覗いてしまったみたいだ
ざわざわする
昨日、ベッドに入った時のことが、何十年も昔のように感じる
なのに、小さい頃、砂場で遊んでいた時のことが一時間前のように鮮明に浮かぶ

他には、どこへ通じているんだろう

【図書館】

…建物の外観と内容が違うことには、
もう驚かない
三層の吹き抜けになっている
明るいな、壁一面が透明になっていて
太陽の光が入ってくる
湿度も感じないし、森の中にいるように清浄だ

ここ、図書館なのかな
ここにあるのは僕の知っている本じゃない
けど、この石が本だということはわかる
そう感じる

あ…

 「太陽光は森を育みます。森の木々は死ぬと土に還り、養分となって新たな命を生かします。
  循環するエネルギーが昔から今まで生命を繋いできたのです。全てのものは、ひとところに
  留まるのが本質ではありません。移り変わるから…」

これは、この石の思念?
思念を持つ石が、この空間でいう本、ということなのか

よく見ると、案内がある
自然科学系の「本」が多いな
ここにあるものを全部「読み」終えようと思ったら、
人生を何万回繰り返さなきゃいけないんだろう

6 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/16(水) 01:31:01
美術館、コンサートホール、食堂、講堂、温泉、…
エメラルドの光のテレポート・ステーションからは、いろいろな施設に行けた。
忘れてはいけないのが、沢山の円形の部屋。
中には不可思議な装置。
人工物にも見えるし、自然の産物にも見える。
この施設は、いったい誰が何の目的で使っていたのだろう。
ふと、体に疲労を感じる。
眠らなくてはならない。
目を覚ましたら、自分はどこにいるのだろうか。
この空間の、眠りについた場所で起きるのだろうか。
それとも、元の自分の家にいるのだろうか。

そう思いつつ、意識を失う──

7 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/17(木) 01:35:05


第五次元…

         まだ一部…

8 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/17(木) 22:48:21
《トロイメライ》
白い長衣をまとった男が現れる
悠久の天地と同じだけ年輪を重ねたようにも、
また見方によっては春の若葉に似て瑞々しくも見える
年齢という概念から解き放たれたよう

あなたは誰?
誰?

彼は黙って僕に近づく
彼の両手が僕の背中に回される
生命の奔流に抱かれている感じ
彼の一部が自分に流れ込み、また僕の一部が彼に流れ込んだように思う

ふと分かる
彼は、僕が乗ってきた白い竜なのだと
僕と彼は天高く舞い上がる
眼下に施設が見える
木々が点になり、風になる

森は黄金の海
金色の木の葉が、一陣の風に揺れる
森の上を抜けると、湖が広がっている
とても広く、深い色を湛えている

僕と彼は畔に降り立つ
彼はいつの間にかまた小さくなって、僕の肩にとまった

湖には桟橋があって、小船が繋がれていた
桟橋に立ってじっとしていると、一枚の絵画に迷い込んだような気持ちになる
遠くで聴こえるのは風の音
忘れていた何かがすぐそこまで戻ってきたような、どこか寂しい感じ
腰を下ろして、湖を眺める
霧の向こうには、何があるんだろう?
対岸に行ったら戻れるかな

僕は小船に乗って、湖に漕ぎ出した

9 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2009/09/20(日) 04:52:11
同じ画像なりマークなりを
毎日見せることによって、
それがあっても、
それが目に付いてもおかしくない、
不自然ではない状態にすることは
洗脳の第一歩だよ。

仮に君の部屋の壁紙に
普通では視認できないメッセージが刷り込まれていたらどうする?
連日連夜、気づかれないように少しずつ少しずつメッセージを刷り込んでいくんだ。
時々、突然気分が悪くなったり、めまいがしたことはないか?
金縛りにあったことは?
お昼ごはんを食べたのを忘れたことは?
大きな都市が丸ごと停電する夢を見た経験は?
球形プラズマ、蜃気楼、観測気球、写真に撮るとしたらどれ?
マンテル
チャイルズ・ウィッティド
その次は?
『アルミホイルで包まれた心臓は六角電波の影響を受けない』というフレーズ知ってる?
螺旋アダムスキー脊髄受信体って言葉に聞き覚えはある?
さっきからずっと
あなたの後ろにいるのは誰?

10 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/21(月) 01:50:03
【湖の島】

霧の立ち込める湖
静かに揺れる水面
湖の中ほどにある島に上陸する
それほど大きい島ではない
起伏も少なく、背の低い草が生い茂っている

島の真ん中には、石造りの台座
玉座のような造りになっている
白竜に促されて、僕はそこに座る
いつの間にか人間の姿になった白竜が、僕の背後に立つ

アチューンメント

そう言うのだと思う。
白竜は僕に目を閉じて合掌するように言うと、
両の手の平で頭を覆った
アチューンメントは進む
20分ほど経って、全ての手順が終わる

僕の手は
エネルギーの流れを媒介できるようになった

11 名前:アンジェ ζ ◆YI1yrpC6Lo :2009/09/21(月) 02:13:34
他にも島があるなら、行ってみたい
探してみたい
そう考えて
二つ目の島を見つけた
島全体を琥珀色の淡い光が包んでいて
いるだけで落ち着く島

そろそろ戻らないと
でも、この島は本当に不思議
ここのことは覚えていて、
また来ていろいろと調べないと


─時系列は前後してしまうけど
その後のこと
僕は何度かこの島に足を運んで、
少しだけわかったことがある

@時間帯によって明度が変わるのだろうか
早朝、太陽が昇ろうかという時刻に観測
明るく広がり濃密
その後、日付が変わるまでの変化に規則性は見られず
翌日の観測では全く異なるデータを得る
2週間の調査の中では規則性を見出せず
以後も継続して観測予定

A光は島のオーラなのだろうか
万物に気の流れがある以上、島にもオーラがあるのは当然のことで、
この島はそれが目視しやすいのだろうか
オーラだとすれば、明度や大きさが変わる事象と符号する
オーラがマイナスのエネルギーに触れると気脈に乱れが生じるため、
普段は小さく調節している
オーラが大きくなるのは気を放つ時
この島のオーラはどういう時に大きくなるのか

B島の中央に旋回する小さなつむじ風について
石を投げ入れたところ、損傷するには至らず、巻き上げられて風の外に放り出された
その際、わずかな気の乱れを感じた
何らかのエネルギーの調和で成立しているのだろうか
2週間の観測の中で、つむじ風の大きさ、風力に変化はみられず一定

12 名前:ロコグリーン@便利屋 ◆yaXiUhPH.s :2009/09/21(月) 09:01:53
なんか難しいことばっかかいてるな

13 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2009/09/21(月) 23:37:49
このガキは!あちこちチャチャを入れないと気がすまないのか?

14 名前:ポエマー曹植 ◆a79leC2.Vc :2009/09/22(火) 00:55:01
数多に存在する次元の中に、とある世界がありました。
その広い世界の紺碧の海にに、たくさんの島々が浮いています。
数ある島の中に、国がありました。
その国には歴史があり、その歴史には彼の名が刻まれています。
まだ名もない彼がぼんやりしながら噛み締めるのは、小さな小さな薬草でした。

冬の冷たい土の中から春が恋しくなり顔を出すその草は、彼が知っている言葉では「春恋草」と呼ばれております。
噛むと青っぽい香りとともに、独特の甘味が口中に広がります。

15 名前:ポエマー曹植 ◆a79leC2.Vc :2009/09/22(火) 00:57:30
ああっ、sageるつもりが、sage忘れた!
文も変だし。
ふふん、グレて燕になってやる、それっ。

16 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/22(火) 01:22:06
白竜に乗って、あの施設へ帰る
そのとき、かれは僕に寄り道をさせてほしいと言った
それは幾つかの場所で
この世界の東端、西端、南端、北端にあるのだとか


   東の祠

   北の祠

   西の祠

   南の祠


竜が語るには、この場所はいくつかの世界の協定によって
調和が保たれているのだとか
ここには支配者がいない
いてはいけない
望めばいろいろな世界と交わることができるけれど、
外界から内側へ入れるのは
ごく限られた人だけ

あの日の夢で、誰かが言った
《第五次元》
機関が何度も調査団を派遣している場所
次元の中にある空間は、次々と機関の手が伸びた
それなのに、ここには何らの侵略の痕もない
管理された形跡もない
ここにあるのは 未知の文明の残照

だから、ここのことは誰にも報せないでほしい
竜は切実に語った
僕は承知した
大学で魔法幾何学を学び、その後も大学に残って博士号を取った
機関に招かれて司令部直属の研究所に配属された
だけれど、心の底でどこか違和感を感じるようになっていた
ここは僕の居場所ではないのでは?

元々、それほど機関への帰属意識もない
興味の赴くままに 研究がしたいだけ
だから僕は、ここに留まることにした
この世界のこと
そして他の世界のこと
いろいろ知りたいと思った

17 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/22(火) 01:43:15
例の施設
僕はここを、《アカデメイア》と呼ぶことにした
ここを拠点に研究するつもりだったから

エントランス中央の、エメラルドの光のテレポート・ステーション
行きたい場所を思い浮かべれば、そこまで転送してくれる
だけれど、時たま
根源の部屋へと繋がってしまうことがあった


【根源の部屋】
>>14
根源の部屋の水鏡に、どこか別の世界の情景が映る

紺碧の海に浮かぶたくさんの島々
僕の視点は、海鳥のように 一つの島にズーム・インする

春の日差しは穏やかで
寒い冬を乗り越えた生命は 皆うれしそうだと思った
この草木の根源も、僕の根源も、きっと同じなんだろう

草原に、ひとりの人を見る
かれは繊細で、けれどもどこか不安定で、
才能にあふれているように見えた

ゆったりとした衣装
表情から、感情を読み取ることは難しい
けれども、どこか心惹かれて
会ってみたいと思うようになった

18 名前:ソーリン ◆00/FP3k5IQ :2009/09/22(火) 03:58:08
【自室】
学校から帰る途中、僕は雷に打たれた。
その瞬間目の前に真っ白い光が広がり、僕の意識はどこかへ飛んでいった。

そして目が覚めると僕はこの部屋のベッドの上にいた。
僕の回りには真っ黒な服を着た人たち
僕は死んだのか?いや、そうじゃない。ちゃんと実体がある
生きてるんだ。

“ここはどこ?”

僕が黒服の人たちにそう尋ねようとしたら、あっちから先に説明してきた。
どうやらここは“機関”が管理している世界で、僕が今まで生きてきた世界とは別なようだ。
この黒服の人たちはその“機関”の関係者らしい。
僕は他にもいろいろ質問したいことがあったが、彼らはそれだけ言うと部屋から出て行ってしまった。

19 名前:ソーリン ◆00/FP3k5IQ :2009/09/22(火) 04:30:25
【自室】
黒服たちが去ったあと、僕はベッドから出て部屋の中を見回した。
ベッド・机・椅子…家具はこれだけか、なんとも殺風景な部屋だ
部屋の出入り口の近くにはトイレとシャワールーム、部屋に一つだけある小さな窓は固定されていて開かない。
台所がないことを除けばワンルーム・アパートの一室といったところか。

それにしてもここはどこだろう?
この世界が“機関”の管理する世界だというのは黒服から聞いた。
だけどこの建物のことまでは聞いていない
この建物はどういう施設なんだ?病院?それとも刑務所?

僕は気になって部屋のドアを開けてみた。
ドアがあっさりと開くということは刑務所ではないみたいだ。そのまま廊下へ顔を出して辺りを見回す
壁に同じようなドアが並んでいる。白い壁が眩しくてよく見えないが廊下はかなり遠くまであるようだ。
廊下の雰囲気からするとどうやら病院ではないらしい。なら宿舎か何かだろう
もしもアパートなら部屋に台所がなければおかしい。きっとどこかに食堂があるに違いない

まあ、今はお腹もすいてないし…とりあえず部屋でゆっくり休むとしよう。
僕はまたベッドに寝転ぶと布団の中に潜り込んで眠りについた

20 名前:ジャッキー・マウス ◆7jQEXJXyCj1N :2009/09/23(水) 01:42:45
見渡す限り荒涼とした砂漠の広がるこの地。
この地には何ヶ所かにわずかばかりのオアシスが点在し、そこ以外では草木も生えぬ不毛の地。
このような地を訪れる者は少ないが、この不毛の地を抜ければ豊かな沿岸都市に着く。
その地へ向かう隊商や旅人はどうしてもこの地を避けては通れない。
だから嫌でもこの地を彼らは知ることとなる。
交易品や食糧を求めて忍び寄る、悪逆の盗賊団の棲まう地―デス・ディザート―として……。

【第6オアシス―ジレ―】
砂漠の夜は寒い。
それだけに一時のぬくもりを与えてくれる寝床が恋しくなるのは、
目の前で左右に揺れる猫じゃらしに猫が飛びついてしまうくらい仕方のないことだ。
でも、寝床だけだとまだ足りない。
砂漠の夜には、寝床と酒が必須なのだ。
この二つが揃ってはじめて快適な眠りが約束される。
ただし、この酒ってヤツは厄介なもんだ。
適度な量なら人生の友と呼べるが、少しでも多くやってしまうと後悔の元になる。
古今東西、酒で破滅を招いたヤツは両手どころか両足まで使ったって数えきれないくらいいる。
これでも俺は酒に強いことで仲間たちには有名だった。
俺自身、酒には強いと自負していたんだが……。
昨日にはまったく想像もしていなかった今日が酒によって招かれてしまったことを俺は後悔している。
そう、昨夜は仲間たちと遅くまで酒を飲んで騒いだ。
焦点の定まらない視界と、まるで炎のように熱く燃える身を迎え入れてくれる寝床は、すぐに眠りへと誘ってくれた。
いつもよりまどろむのも早かったし、酒をたくさん飲んでいたから詳しいことは知らない。
目が覚めたとき、俺は仲間たちと一緒に縄でがんじがらめにされ、
今までにやった悪事は百を下らないであろう、目つきの悪い男たちにぐるっと囲まれていたんだ。

21 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/23(水) 02:18:24
この日は、アカデメイアを探索することにした
だって、自分が住む家になる場所なのに全貌を知らないなんて
ちょっと困ったことだと思ったからだ

まずは庭のプラタナスの木の下に行く
木が喋ったような気がする
「案内が必要かね」
僕ははい、と答える
「よろしい、少し待っていなさい」

案内はすぐに来た
黒い毛並みの猫が二匹
一匹は瞳が金色で、もう一匹は瞳が銀色
すぐに気付いたけど、この猫たちはただの動物じゃない
物質ではなく、エネルギーの結晶
つまり、パワーアニマルなのだ
SoirとNuit そういう名前だという

二匹の後について、アカデメイアの中へ向かっていく
外観は相変わらず大きな樹
大地に根を張って、多くの枝を八方に伸ばしている
だけれど、中に入ってみるとこれが全然違う
ロビーのようになっていて、壁際に長椅子も備えてある

Soirがエメラルドの光のテレポート・ステーションに近寄ってこう話す。

「この奥にひとつ部屋がある。扉はないが入ろうと思えばいつでも入れる。
 ここに入れば否応なく『自分の根源』を見ることになるだろう。
 今まで蓋をして、見ないようにしてきたものに向き合うことになるだろう。
 それは決して、楽なことではない。
 おそらくは誰にとっても苦しみを味わう体験となるだろう。
 だから私からそれを勧めることはしないが、かといって止めることもしない。
 我々すべての存在が、もっと深くにある『根源』とつながりなおすには、
 今もまだつながっているのだと本当の実感として、体感として知るためには、
 強く強く結びつけなおすためには、
 こういったことは、本来、避けて通ることはできはしないのだ。
 これまでの長き生にわたって自身の下位チャクラに残してきてしまった
 不要なエネルギーを、よく見て、整理して、ある時は感謝をして手放し、
 またある時は感謝を持って受け入れる……
 こういったことは必要不可欠なのだ。
 しかし誰にでもタイミングというものはあるから、私からは今すぐやれとは言わない。
 ただ、扉はいつでも開いているということだけ知っておくといいだろう。
 こういったエネルギーが、この「アカデメイア」や、あるいは他の
 空間を回す『軸』となっている」

22 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/24(木) 00:35:39
テレポート・ステーションから、今まで行ったことのない場所へ。

【世界樹】

今から少し前。
この場所から、世界樹が枝を伸ばしたという。
世界樹は全ての生命に繋がっている。
どこにあるのか、いや実在するか否かも確認されていなかった。
それが、この空間のここから姿を現したという。

世界樹はどんどん枝を伸ばし、今はあたり一面を覆ってしまっている。
「ここは、私達にとって聖地のようなものなのだ」
案内の猫は感慨深げに言った。

23 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/09/24(木) 00:42:52
【世界樹】

世界樹の枝は、末端の細いものでも大木の幹ほどの太さを持つ。
だから、樹の全貌を見ることはできない。
それに、地上に表出している部分とても
氷山の一角に過ぎないのだ。
全ての生命に繋がる樹。
圧倒された、としか言えない。

樹の根元に石碑があって、
何かが書いてある。
でも、読めない。
図書館に行って、言語も勉強しなきゃなと思う。

24 名前:エマヌエーレ ◆VESPAISCbg :2009/09/24(木) 03:24:31
視界には暗闇だけが広がっていた
どこを見ても漆黒の闇しかない
以前サパーナの楽器店でセリーズに買い与えたピアノよりもずっと黒く、そして深く高く広がる空間
ごくたまにチカ、チカ、と光が点滅する
それも一ヶ所だけではなく上や下、右や左いろんなところで
だが暗闇の中にあっても自分の体だけは太陽の下にあるのと同様、
シャツに縫いこまれたきめ細かい刺繍の模様まではっきり見て取れるくらい明るいのだ
延々と暗闇の中を漂う

・・・またか

私にはここがどこなのかはわからなかった
しかしこの体験はすでに何度も経験しているから、この後どうなるか私は知っている
何事も無かったかのように私は朝を迎えることとなるのだ

今年に入ってから決まって満月の夜にこの不思議な体験をする
一度眠らずに朝を迎えようと決意したことがあったが、そのときは起きていながらにこの体験をした
突然視界が歪み、一瞬のうちに暗闇の世界に放り込まれていたのだ
先ほどまで座っていたはずのソファも、暇潰しに読んでいた魔法書も刹那に消え去った
そこにあったのは私の体とそれを覆う着物だけだった
そして気がついたときには暗闇の世界に行く前の体勢のまま書斎で朝を迎えていたのだ
一睡もしなかったときと同じ睡魔が私を襲っていたので、元の世界において私はずっと起きていたのだろう
眠って満月の夜を迎えたときにはしっかり睡眠をとれていたのでただの夢かとも思っていたが、
数ヶ月前のこの勇気ある試みによって、残念ながらその可能性は無くなった
或いは白昼夢といった類のものかも知れないが、それにしては鮮明に記憶に刻み込まれている
何より毎月決まった夜に同じ体験をするのは、最早人智を超えた何かの力が働いているとしか思えない

そろそろか・・・

この不思議な体験において唯一私にわかるもの、それはこの世界から解放されるまでの体感時間だ
まるで私の身体に時計が埋め込まれたかのように、あとどれほどの時間で元の世界に戻れるのか秒単位で理解できる
なぜなのかは私にもわからない、しかしそれを理解しているのだ
だが、それが救いでもある
このような空間にいつまで居なければいけないのかわからないというのは恐怖だ
私はその恐怖を知ることなく、この世界から解放され、そして朝を迎えるのだ・・・

25 名前:エマヌエーレ ◆VESPAISCbg :2009/09/24(木) 03:25:14
【寝室】

「おはようございます旦那様、今日もいい天気ですニャ」

アスランの甲高い声が響くのとほぼ同時に、私の意識はこの世界に還ってきた
晩夏の朝の心地よい日差しが寝室に溢れ、私の体を包み込む
執事であるこの猫型獣人種の若者の指示に従い、メイドたちがカーテンを開いたのだ
つい先ほどまで暗黒の世界にいた私だが、不思議と眩しくは感じない
何度も体験したことなので、そういうものだと受け止めている

「旦那様、ただ今紅茶を用意いたしますニャ」

アスランはそう告げると銀で装飾されたティーポットとティーカップを用意する
私はその甲斐甲斐しい動きを横目で眺めつつ、ベッドから出て窓際に歩いていく
眼下にはこのパライソで一番広大で、かつ美しく造成された私の屋敷の庭園と、
そのはるか向こうには祖父が拓き父と私が二代で拡げた我がヴェスパ家の大農園が広がる
私は毎朝この景色を眺めることを日課と決めている
祖父と父がその人生をかけて大きくしたヴェスパ家の当主としての自覚を毎日忘れぬようにするためだ

(たとえジブラルタル総督でも、このように美しく、荘厳な光景を毎朝眺めることはできまい・・・)

誇らしさについ口許が緩む
開拓時代のごく初期に築かれたジブラルタルは、今なおシモン・ボリバル次元の政治の中心地ではあるが、
その中核たる総督府の窓から見えるのは、郊外に広がる暗く汚い、腐臭の漂う貧民窟だけだ

「旦那様、紅茶が入りましたニャ」

アスランの声で私は我に返り、そして彼が用意した紅茶の置かれた小さなテーブルに向かう
これも日課となっていることなのだが、私は毎朝サパーナの高級茶商から買い求めた紅茶を飲んでいる
以前、アスランに大農園で栽培しているコーヒーではなく、なぜ紅茶を愛飲するのか尋ねられたことがある
彼のような使用人にとっては当然の疑問なのかもしれない
だから私はこう答えてやった

自分にたくさんの財貨をもたらす魔法の豆を、自分の嗜好のために使うのは愚か者のすることだ

・・・とね

26 名前:エマヌエーレ ◆VESPAISCbg :2009/09/24(木) 03:26:17
紅茶を飲み干したのとほぼ同時に、アスランが朝食の準備がととのった旨を伝えてきた
彼がヴェスパ家に仕えるようになってすでに三年、どうやら私の生活のリズムを完全に把握しているようだ
私は人間以外の種族に対して好意は抱いていない
私が生まれ育ったこのシモン・ボリバル次元において人間以上に優れた知性を持つ種族など存在しないからだ
その人間でさえ、愚かな者は少なくなく存在する
ましてや他の種族など・・・
奴らはこの社会の普遍的な秩序や掟も守らない、腕力だけはある野蛮な連中であり、
だからこそ圧倒的な武力と厳格な支配をもって奴らを統制しなければ社会は破滅してしまう
人間と他種族との共存を訴える愚かな扇動者もいるが、これは私が若き日に決して消えない右頬の傷痕と引き換えに到達した真理だ

当初アスランは他の亜人種同様サパーナの奴隷闇市で商品にされていた
猫型獣人種はシモン・ボリバル次元には本来生息していない種族であり、珍しさからかそれなりの値が張られていた
私は当時奴隷舎で流行した疫病のせいで数人の奴隷を失っていた
大農園の経営がこのような些事で阻害されるのが気に食わなかった私は、
その闇市で数人の新しい奴隷たちの中の一人としてアスランを買い取ったのだ
或いは猫型獣人種というもの珍しさから、過酷な労働には不向きなこの小柄な奴隷を買ったのかもしれない
だがあくまでそのときの私にとってアスランはただの名も無き奴隷であり、
彼が労働に疲れ果てその最期を迎えるまで私たちの関係は変わらぬはずであった
しかしそれは我が大農園で働く奴隷がみな平等に受ける待遇であり、
私が貴重な財貨を投じてまで労働力として集めた奴隷なのだからそれが当然のことだろう

だが、どこか知らぬ他の次元から偶然この地にやってきたこの猫型獣人種は違った
先住民出身の他の奴隷たちとは明らかに違う、非常に高い知性を彼は私に対して示したのだ
彼の考え出した新しい農法によって農園作業は効率化され、我が大農園の生産性は飛躍的に高まった
私はこれによって莫大な利益を得ることができ、パライソどころかシモン・ボリバル次元で最も成功した農園主となった
この頃から私はアスランに対して、他の奴隷たちとは違う人生を与えようと考え始めた
まず彼に対して私は大農園の監督を任せてみた
その効果はすぐに現れた
どのような手段を使ったかまでは聞かなかったが、それまで頻発していた奴隷の脱走未遂件数は漸減していき、
一部の常習的なならず者奴隷以外脱走を試みる者はいなくなったのだ
次に私は屋敷内での雑務をアスランに与え、これも彼は見事にやってのけた
その後も私の与える仕事を的確に、そしてより効率的に成功させたアスランに対し、私はある決断を下した
私が執事を務めることを命じたとき、アスランはその金色の眼を瞬きさせることなく頷いたのだった

それから一年半、今まで雇った人間の執事の誰よりも規則正しく務めを果たすアスランへ、
三年前にはまったく予想もできなかったことであるが、私は絶大な信頼を置いていることに気がついたのだった

27 名前:ソーリン ◆00/FP3k5IQ :2009/09/27(日) 00:37:15
【自室】
僕は夢を見た。
雷に打たれたあの時の夢を

だけどあの時とは少し違う
雷の青白い光の中に人が居るのだ
あれは…黒服?
そう思った次の瞬間、黒服が僕の手をつかんで光の中へ引っ張ってしまった


「うわあっ!」

僕は跳び起きてあたりを見回す。眠りについた時とかわらない"この世界"の部屋だ
どうやら僕がこの世界にやって来たことは夢じゃないらしい。

28 名前:ソーリン ◆00/FP3k5IQ :2009/09/27(日) 02:15:20
しかしおかしな夢を見た…
僕が"元いた世界"で雷に打たれた時には黒服の姿なんてなかったのに
でも、夢の中でははっきりと見えた。
もしかすると眼が見たことを忘れていて、心の奥底が光の中の黒服を憶えてる?まさかね
きっと短い間にいろいろあったから混乱してるんだろう
ただそれだけ。

よく眠ったからか、体の疲れも取れて少し元気になったような気がする
もう少ししたら部屋を出てみようかなあ…

29 名前:Foucauld ◆FUCO/F6Amw :2009/09/29(火) 22:38:25
私は微かな虫の鳴き声に目を覚ました
そこは静かな木立の中にひっそりと佇む小さな社の前であった

社は随分古いようであちこち傷み苔むしていたが
不思議な威厳を湛えており、容易に人を踏み込ませない近付きがたさと
慕って来る者を優しく包み込む暖かさをを持っているように思えた

「ここは…」

知っている…ような気がする

何故かそう思うのだ
それは記憶ではなく、私の身体が覚えているようだった
そして、そういう不思議な感覚が私に語りかけてくるのだ

何かが私を呼んでいる…
そう感じた私は立ち上がり、社に向けて歩を進めた

そして

雷のように鋭く、小川の照り返しのように眩しく
そして月の輝きのように優しい何かが私の身体を貫いた

誰かが微笑んだ…そんな気がした


私は粗末な小屋で目覚めた
森で倒れていた私を、ここに住む、まだ年若い夫婦に助けられたのだった
疲れきっていた私は二人の質素で素朴なもてなしに甘え
その夜は床についた

30 名前:Foucauld ◆FUCO/F6Amw :2009/09/30(水) 21:18:56
「ふぅ、むっ…」

なんとも言えない寝苦しさに私は目を覚ました
さほど気温が高いとも思えないのに、とめどなく汗が滲んでくる
べとついたかび臭い空気が身体を締め付けるようだ

たまらず私は布切れを繋ぎ合わせただけの粗末な蒲団を蹴り上げた

私はムクリと起き上がり辺りの様子をうかがった
2人はすでに熟睡しているようで仲良く2つの大小の寝息が
やや控え目に不協和音を奏でていた

夫婦がいうには、私は森で倒れていたらしい
昼間のあれは夢だったのか…
そして、ここはどこか…

考えても答えの出ることのない疑問が頭をもたげ、たまらず私はゴロリと横になった

そして、今まで考えもしなかったある事実に気付き、私は驚愕するのである



「私は、何者なのだ」

31 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/02(金) 16:00:14
【世界樹】

世界樹の下はとても居心地がよくて、
ここに座って心を逍遙させたらどれほど素敵だろう
腰を下ろす
草が風に揺れて音を立てる。
よく見ると草の間から小さな白い花が顔を覗かせている。
ぽっと白い明りが僕の目に飛び込んでくる

上を見上げると、世界樹の葉は変幻自在に色を変える
生まれたばかりの若葉の色から、生命力に満ちた青へ。
木漏れ日は白から金色へ変わり、紅の花が歌い上げる。
やがて結ばれた実は大きく熟れて、ぽとっと落ちる。
目の前に落ちた実は僕を飲み込み、僕はどこか別の場所へ流れていく…

32 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2009/10/05(月) 11:54:57
世界樹―。
それはこの世界における兵家必争の地であった。

33 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/09(金) 22:27:27
【北の祠にまつわる伝説】
まあ! なんて大きな薔薇の樹!
北の祠のまわりはとても寒いのに、どうしてこんなに紅々とした綺麗な薔薇が咲いているのでしょう

もっとも、ここには白い薔薇しか咲かないっていう話だったんですけれど……
どうして、いつから紅い薔薇が咲くようになったのか
聞いて下さる?

むかしむかし東西南北の祠の周りには不思議な力を持った領主がおりましたの
東西南北、そう四人の領主が

東の領主は温厚な性格の春の領主が
西の領主はお金が大好きな夏の領主が
南の領主はでっぷりと太った陽気な秋の領主が
そして……北には陰気で冷たい目をした冬の領主が 冬を司る冬の領主は冷たい氷柱のような心の持ち主でした

34 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/09(金) 22:37:12
領主には一人の妻がおりました
春のように明るい美しさ、夏の空のように澄んだ瞳、秋の雲のように柔らかな白い肌
なに一つ、穢れていない、とても美しい自慢の妻でした

心も容姿も美しい妻は領民たちの心をも掴んでいました
だってそうでしょう? 人は誰だって美しいものが好きなんですもの
冬の領主の妻はリーザといいました

領主の冷たい瞳も、リーザの優しい微笑みでほのかに柔らかな光を見せるのでした
ところが、この幸せも長くは続きませんでした
リーザへの強い愛情が領主の猜疑心の強さを増強してしまったのです

35 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/09(金) 22:45:44
領主は自分の妻を見る領民の目に劣情を見いだしてしまいました 誰一人、そんな目では見ていなかったのに!
妻を、リーザを穢すまいと領主は領民の男たちから目を抉りだしてしまいました
目を失った領民たちへリーザは哀れみの眼差しを向けました 領主はそれも気にくいませんでした

リーザの関心が自分以外の男にいくのが許せなかったのです
リーザは夫の内心など知らず、美しい歌を歌いました
領民の心を慰めるために

翌日領内の男たちから両耳が削がれていました
両目両耳を奪ったにも関わらず領主は領民と自分の妻を信じることができませんでした
誰の目にも妻を触れさせないために、領主はリーザを寝室の壁に塗り込めてしまいました
生きたまま 美しいまま


36 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/09(金) 22:49:57
どんどん失われていく酸素とどんどん露わになっていく夫の狂気……
リーザにとっては幸せな結末だったのかもしれません
ですが、独りよがりな、相手の未来を殺すということはいけないことだと私は思うのです

こうしてリーザは領主だけのものになりました
永遠に

リーザの塗り込められた壁の周りにはいつのまにか蔓薔薇が咲くようになりました
リーザの肌のように白く清らかな白薔薇が
領主は毎晩リーザを掘り起こしては、塗り込めました
確認しないと気が済まなかったのです 

37 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/09(金) 22:53:06
素手で削る壁
爪に食い込む煉瓦

血で染まる堅い煉瓦……煉瓦を伝い紅く染まる蔓薔薇
紅い鮮血で染まる薔薇……ある日領主は冷たくなっておりました
狂い死にでしたの

それ以来、ここには紅い薔薇しか咲かないのらしいのですけれど、こんな恐ろしい話
あなた信じられて?

38 名前:エマヌエーレ ◆VESPAISCbg :2009/10/09(金) 23:36:06
朝食を終えた私のもとに、アスランがかなり分厚い書類の束を持ってくる
非力な猫型獣人種にとっては相当の困難を強いる重さなのだろうか、アスランはふらつきながらやってきた
彼を労りながら受け取ったそれは、ずしりと私の両腕に猫型獣人種には耐え難い重みを伝えてくる
これが今日一日で私が処理しなければならない、大農園経営上重要かつ無視できぬ書類の山である
午前中から昼を挟み太陽がやや西に傾く頃まで、この仕事はまず片付かない
今は亡き私の父ピエルルイジは何よりもこの仕事を最も苦手としていた
祖父とともに裸一貫でこの地にやってきた父にとって、大農園領主としての執務は慣れないものだったのだろう
父は私が十代の後半、まだ少年と呼ばれる年頃からこのような仕事は私に一任していた
そうしてその時間を父は「ジブラルタル詣で」のために費やしていた
当時まだ一介の地主に過ぎなかった父はジブラルタルの官僚たちに見下され、幾度も屈辱的な目に合わされたという
ヴェスパ家の基盤がまだまだこのパライソに根付いていなかった頃の話だ
それが今ではどうだ、彼の地の官僚たちのほうからこちらにご機嫌伺いをしにやってくる
官僚たちだけではない、ジブラルタル総督でさえも私の意向は無視できないのだ
私はこのことに思いが巡るたび、つい口許が緩んでしまう

父に一任という名目で若い頃から鍛えられたためであろうか、私は一日において執務時間が一番好きである
領主としての仕事、それはこの広大なヴェスパ家の土地が全て私の支配の及ぶ領域であると再認識できる機会でもあるからだ
事実書類の数々はいかに我が大農園が豊饒なものか、いかに莫大な富を私にもたらすのか、それらを雄弁に物語っていた
アスランから聞くところによると執務中の私は常に誇らしい笑みを浮かべた顔つきであるそうだ
それもそうであろう、私は決して沈んだ気持ちで執務をしたことが無いのだから・・・

39 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/10(土) 20:55:15
流れ付いた先─
悠々と流れる大河の岸辺
振り返れば峻厳たる断崖が人を拒み
にわかに霧が立ち込め、視界をおぼつかないものとする

「あのとき」
「案内人の猫が「根源」ということばを口にしたとき、」
「なんだか…」

気が付けば僕は釣竿を持っていて、
傍らには筏が置いてある
おあつらえむきに

河へ乗り出してしばらくすると、霧も晴れてくる
体を抱く風は寒いほどで
ぶるっとひと震え
そうして釣竿をぽたり

筏のしたに何かいる

大きくうねるものが、筏のしたにいる
水が盛り上がる
角が露になる
しぶきとともに、竜が飛び上がり、天に向かって駆ける
釣竿に引っ張られて、僕もまた天に昇る

遠くへ
>>33-37
北の祠へ

40 名前:Foucauld ◆FUCO/F6Amw :2009/10/11(日) 02:35:35
私がここに来て3日になる
私はまだ年若いその夫婦に世話になることになった
住まいは夫婦の家の納屋を間借りさせてもらうことにした
ここで彼らと暮らしながら、ここの生活に馴染んでいこうと思ったからだ

3日経った今でも私の記憶は曖昧なままであった
思い出した事といえば、自分の名前、
そして13まで田舎の祖母の家に預けられていたことくらいであった
始めのうちは、何とか記憶を辿ろうと必死に頭を捻ったりもしたが、
それが無駄だと分かった時から、ここの暮らしを優先するように心掛けた

我ながら随分あっさりしてると思ったが
それが元々の私の性格なのか、それすら検討も付かない以上
考える事すら無駄であった

季節は秋に差し掛かっているのか、私の知る気候とはまた違うのか
真っ赤なリコリスの花が畑の脇を鮮やかに彩っていた
主人は
「この花は何故か毎年彼岸に合わせるように花を咲かせる。まったく不思議な花だな。」
と笑った

41 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/13(火) 00:36:14
>>39
猫は片目だけ草の影から出して、岸辺をうかがいました
片目だけ動かすのは彼のなにか考え事をするときの癖なのです
サファイアのように蒼く目は光っていますが、口元はどこか退屈そうです

「驚いたな。竜を人間が釣り上げたぞ。いや、人間を竜が釣り上げたのかな」
赤いコートを着たテントウ虫は、猫の呟きを耳にすると語りかけました
「マーリン。あなたが誘ったんでしょう? 案内人さん」
マーリンは白い髭を揺らしながら答えました

「まぁねぇ。しかし俺の親も変な名前をつけたものよ。マーリン。だってよ。マーリン! どこの世界に魔術師の名前を
つける親猫がいるってんだよ」
「あなたが、あの人間にかける魔法はどんな魔法なの? 小さな魔術師さん」と、二人の間に黒うさぎが割り込みました



42 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/13(火) 00:49:06
「お前さんに『小さな』呼ばわりされたくないな。子うさぎちゃん。全く女ってのはどうしてこんな小さなうちから
。こましゃくれ、いや、おしゃまな可愛い黒うさぎちゃん。さぁなぁ……」
「マーリンのおじさま! おじさままでわたしが子うさぎだとおっしゃるのね。わたし、今度の満月に月の舞踏会に行きますのよ」
「ああ、わかった。わかった。舞踏会まで綺麗に毛並みをととのえておきな。王子様が3メートル先からでも、
お前さんを見つけることができるように」
マーリンは黒うさぎの耳に真っ赤な薔薇をさしてやりました

「まぁ、素敵な薔薇ね! 香りも良いわ」
「綺麗な薔薇だろう? お姫様。この薔薇がたくさん咲いているところにあの人間は向かったのさ」
「マーリン、この薔薇って『北の祠』のじゃなくて?」
「そうだよ。俺の魔法があの人間にとって『白魔術』になるか、『黒魔術』になるか……それもあの人間次第だなぁ」

マーリンは、草むらから首を出して嘯くのでした

43 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/14(水) 00:45:59
>>41-42
【北の祠】

北の祠に着くと、竜は一陣の風となって姿を消しました。
姿は、と言ったほうがいいのかもしれません。
風は木々の間を抜け、薔薇の花をくすぐり、祠の窓を通ってごうごうと音を立てます。
風の音はやむことなく、吼えたてるように、高らかに呼ぶように、低く叱り付けるように、
細々と吸い込むように、その音を変えて鳴り響きます。

ふと、僕は思うのです。

 「祠の中に入ったら、どんなに素敵かしら?」

それがマーリンの魔法だったのかもしれません。
深紅の薔薇が咲く道を通り、祠へ向かいます。
ただ紅く艶かしい花弁。漂う芳しい香。夢幻へといざなわれるよう。
だけれど…

 「一足進めるごとに、腹の底でことりと落ち着く音がする」

祠の扉が開く。その向こうには、荒れ果てた城館があって。
領主の寝室の壁際には、紅い蔓薔薇が咲いていました。
鋭い棘に身を包み、花を守っているのに。その姿はあまりにもおぼつかない、そんな薔薇が。

僕は薔薇の前まで進みました。
薔薇は不自然に揺らぎ、僕の方に頭を向けました。
ふと、薔薇が表情を浮かべたような気がしました。
ぞっとするような表情をこちらに向けたような気がしました。

僕はただ黙っています。
薔薇の花は、寂しさ、悲しみ、いや、そんな単純な言葉とはかけ離れた複雑な感情を一度に抱え、
持て余して外に向けているのです。
けれど、僕の方ではみるみる心が落ち着いていきました。
まるで、人の感情や外物の作用を受けるその外側の無の世界に根を下ろしているように。

 「あなたにお話したいことがあるのだが、一度に言ってもお分かりいただけないでしょう。
  ともあれ、まず僕があなたに申し上げたいことは…あなたは人の奏でる音楽をお聴きになったことは
  おありだけれど、地の奏でる音楽に心を留めたことはありますまい?
  また、地の奏でる音楽に心を留めたことがおありだとしても、
  天の奏でる音楽はご存じないのでしょう?」

44 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/16(金) 22:42:21
【紅い蔓薔薇】

天の奏でるですって? 星の奏でる音楽も月の奏でる音楽も天の奏でる音楽には及ばないのかしら
音楽を好きになるのに、奏者も理由も関係ありません

聞こえた音楽が素敵だから 音楽から太陽のにおいがしたから
音楽に干した布団に寝転んだときのような心地よさを感じたから……
つまり、わたしたちの耳は心よりも感情的で脳よりも理論的なのです
顰め面をした評論家の中身も、たぶんこんなものでしょう

音楽について、視覚的な美しさについて思いを馳せるとき……わたしは耳を削がれ目を刳り抜かれたという
領民たちのことを思い出すのです
天の奏でる音楽ってどんなに素敵なのかしら この人間は私に『天の奏でる音楽』を聞かせてくれるのかしら
領主の美しい妻が領民の耳と目を領民たちから結果的に奪ったように、美しいものにはある種の残酷さと
罪深さが潜んでいます もし…もし……わたしが『天の奏でる音楽』を聞いたなら、この人間は私からなにを奪うのでしょう

45 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/17(土) 00:36:22
>>44
天の奏でる音楽は──
必ずしも美しいと感じられるとは限りませんよ。
さあ、いったいぜんたいどんなものかを
説明するにも骨が折れるのですが、ともあれお聞かせ致しましょう。

天の奏でる音楽についてお聞かせする前に、
まずは地の奏でる音楽についてお話しましょう。
地の奏でる音楽とは、風が吹きおこったとき、
大木の洞穴が発する叫び声のことを言います。
「風の音」、普段、われわれはそう呼びますね。
ただし、おわかりでしょう。
風そのものには音はなく、あの悲しい悲鳴のような、あるいは力強い音色は
実は洞穴がその形状によって選びとった音色なのです。
しかし、ひるがえって考えてみれば、風のないところでは洞穴も音を立てないのです。
地上のざわめきは、音の無い風を必要とするのです。
音もなく目にも見えない風、その意味では無にも等しい風を必要とするのです。

46 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/17(土) 00:37:22
さて、大木の洞穴がその形に応じてさまざまな音を立てるように、
人間の心もまた、その在り方に応じて、喜怒哀楽さまざまに揺れ動きます。
…それこそが、天の奏でる音楽です。

喜びと怒り、哀しみと楽しさ、憂いと嘆き、移り気と執念深さ、
なまめかしさと奔放さ、あけすけとわざとらしさ、
このような感情は、夜となく昼となく、私たちの心の内から現れるのですが、
はたしてどこから生まれ出でるのでしょうか。
ああ、もどかしい限りですが。
これは大地が無音の風を根源として楽を奏でたように、
どこかに根源があって、そこから生じてきているはずではないでしょうか。

もし喜怒哀楽の情をもたらす根源がなければ、
自分という人間も存在することはできないでしょう。
逆に、もし自分という人間が存在しなければ、
その根源から喜怒哀楽の情を取り出すものもないでしょう。
とするならば、その根源と自分とは、至近の距離にあるはずでしょう。

47 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/17(土) 01:14:02
かの領主さまは──

(頭の中に、息づいたイメージが飛来し、
 そして過ぎ去ってゆく)

ご自分の心が乱れたとき、その埋め合わせをしようと
ご自分の外にばかり方法を求められたのではないでしょうか。
本当はご自分の内にこそ、答えは見出せたのではないでしょうか。

蔓薔薇の君よ、ここは恐ろしいほどに時を留めているのですね。
雪のような白薔薇が、紅に染まってから。
ずっと、このままなのですね。
ここはぞっとするほど美しいけれど。
かの領主さまと奥方さま、そして領民と国の悲しい物語の痕跡が
残ったまま、時が動かないのですね。

もしもあなたが天の奏でる音楽に触れれば、
時は動きだすのでしょうか…?

すべてがよろこびにうっとりして、微笑をたたえているようだった

この地を訪れ、そのように言えるようになるのでしょうか…?

48 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/17(土) 23:37:41
>>47
(なんて、静かで情熱的な瞳をしているのかしら 綺麗な生物が真摯な色で語る言葉は、それだけで聞き手の心を引きつけます
むかし、同じ瞳をした小鳥が来たのを思い出しました たった一輪の薔薇を手に入れるためにわたしの棘で小さな胸を突いた鳥を
いけないことだとわかってはいても、わたし、目の前のこの人間が同じように棘に突かれるのを想像してしまいました きっと
…きっとそれは綺麗で冷や汗をかくように美しい光景でしょう)

美しいものは人を幸福にさせ、狂わせ、また不幸にもします
リーザは、たしかに領主を幸福にしましたが、狂わせ、不幸にもしました 美しいものはどの世界にあってもある種異質で希有な存在なのです
そう考えてみると、幸福は狂気と不幸と兄弟のようなものなのかもしれません

求める、期待する、領主の愛情はいつしか偏執的なものへと変わっていきました
いいえ、最初からその気質があったのかもしれません 地中に眠っていた種をリーザという水と領民という栄養が育ててしまった
そんな気もします

49 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/17(土) 23:44:22
正気を失った女性は、童女のように年をとることを忘れるといいます
ここが恐ろしいほどに刻を留めているのも、ここにいた者たちが正気を失っている証なのかもしれません

同時にわたしは、このままずっと美しいままのこの刻に身を委ねてみたいと思うのです
お酒に酔った後のような怠惰な感情からではありませんわ
刻が動き出して有機的な醜さを得る恐怖からでもありませんわ ただ……


すべてがよろこびにうっとりして、微笑をたたえているようだった
そんな風景がこの地に訪れるのは想像もつかないのです


50 名前: ◆IhjQqhHDYnz7 :2009/10/18(日) 01:43:22
――それは、禁じられた書物でありました。

古代マギセクシアに実在したと言われる「樫の木の賢者―ドルイド―」の魔術。
主にヤドリギから呪力を得て、特に月齢六日目、樫の木に生えたヤドリギは最上とされていました。
魔術の媒体が森の木々たちであるだけに、その術者たちは森を愛し森とともに生きておりました。
彼らの名はドルイド。森の妖精やエルフたちから、その棲み処である森への立ち入りを唯一歓迎された存在。
彼らはその生涯の大半をこの魔術の習得に費やし、それを弟子に授けて母なる大地に還ってゆきました。
伝説によればこの魔術は術者から術者へと口伝でのみ継承されることを許され、
膨大な量の知識と天文学的な数の詩歌をすべて暗記しなければならない神秘の魔術であったといいます。

神託や呪歌、医療など多様な分野で活躍したこの魔術の術者は賢者と呼ばれ人々に敬愛されていましたが、
魔術習得に伴うさまざまな困難や、もっと多くの人々にとって習得が容易な近代魔法の発達によって、
この森の魔術は次第に世界からその姿を消していったのでありました――。

51 名前: ◆IhjQqhHDYnz7 :2009/10/18(日) 01:44:04
【第四図書館未分類図書置場】

埃でくすんだ壁には、このドアの先が何であるかを示す金色の表札が打ち込まれていた。
ドアの一歩半ほど手前に一人の少女が燭台を手に佇んでいる。
彼女の名はポルカ・ユン・シュテルンベルク。
セミショートの黒髪と銀縁眼鏡の下のアイスブルーの瞳が美しい、まだ17、8歳の少女である。
しかしその幼さとは対照的に大きな漆黒のとんがり帽子、そして全身を包む同じく夜の色をした法衣が、
彼女がこの魔法学院の成績上位者であること、そしてその地位にふさわしいだけの魔法力を習得していることを告げている。

――ガチャリ。
重い音をたてて扉の鍵が解かれる。彼女がノブに手をかけると、ギギッ、と軋みながらゆっくり扉は開かれた。
扉を開けて一歩進むとすぐにかび臭いにおいが彼女の華奢な身体を包む。
一瞬動きを止めた彼女だったが、すぐにハンカチーフを取り出し顔に当ててやりすごす。
すっ、と彼女は再び歩みを進める。時々左右の棚を確認しながら、足音も無く部屋の奥に進んでいく。
無造作に積まれた書物のほとんどは埃をかぶっているし、大理石造りの白亜の柱は微かに湿っている。
いくら未分類図書の一時的な保管場所とはいえ、貴重な書物の数々を置いておくのにふさわしい環境とはいえない。

「なんて埃っぽい部屋なのかしら。司書の職務怠慢ね」

あまりの散らかり具合に、つい不満を口に出してしまう。左手に持った燭台のともし火がゆらり、と揺れた。
暗く湿ったこの部屋から、寄付者の希望通り図書館に移された書物が本当にあるのだろうか。
先ほど彼女が入ってきた扉の鍵も重かったし、もう何ヶ月も施錠されたままだったに違いない。
彼女にはここが書物の墓場に思えてきた。

52 名前: ◆IhjQqhHDYnz7 :2009/10/18(日) 01:44:50
部屋の奥まった場所に、彼女の目的の書物があった。
高等魔法詠唱における位相変換方程式の考察、という名の分厚くずしりと重い書物だ。
ページのほとんどがすっかり日焼けしている。相当古い、おそらくは三百年ほど昔の書物のようだ。
コサンデン先生から探してきてほしいと頼まれていた魔法書であることを確認すると、彼女はそれを抱きかかえ踵を返す。
そのまま何事も無くこの部屋を出るつもりだった彼女だったが、何かの拍子に右肘が書物の山に触れ崩してしまった。

「あー、もう!」

燭台と頼まれた書物を棚の下から二番目に置いてから、彼女は急いで崩してしまった書物の山の整理を始める。
あまり快適な環境ではないこの部屋に長居はしたくない。彼女は早くこんな埃っぽい部屋から出たかった。
それなのに、一冊の本を手に取ったとき彼女の動きが止まった。
頼まれた書物よりもはるかに分厚いその本のえんじ色の表紙には金字が刻印されている。

「これは……古代マギス文字……?」

古代マギス文字、それはずっと昔、ここからはるか西の彼方、海の向こうの王国で使われていた文字だ。
彼女はかつて受けた語学の講義の内容を思い出しつつ、その本の題名を読み上げようと試みた。

「ドルイド……魔術の……口述……筆記録!?」
「そんな……ドルイド魔術って……。どうしてこんなものが……?」

記憶を辿ってその名を口にしたとき、彼女は戦慄した。

――それは、禁じられた書物でありました。
そして同時に、手に入れた者の好奇心と理性を奪う、魅惑の書物でもありました――。

53 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/18(日) 04:56:57
>>48-49
蔓薔薇の君よ、そのような美質があることは僕も存じております。
絶対君主のように人を捕らえ、天上の高みにも押し上げ、あるいは泥の底にも突き落とすような美質が…
なんと、人々がほめそやす《運命》(Fortuna)に似ていることでしょう。
領主はリーザを愛し、鳥よりも高いところへ舞い上がったのでしょう
しかし、結局彼はリーザの微笑み、声、そうしたものに囚われて、
やがては天から地へとまっさかさまに落ちてしまった…
この場所の美しさは、すべてその類の美質であるようにお見受けいたします。

ただし、それとは全く異なる美質があることをご存知でしょうか?
と申し上げるのも、僕は平穏に息づく美質を信奉しているからなのです。

…不躾にも告白いたしますが、あなたは今にも僕の心を捕らえてしまうほど美しいのです。
もしも僕の身に恋の矢尻が射込まれれば、僕はたちどころに愛の従僕となり、
やがて狂気に身を委ねるのだと思います。
あなたの一輪の花への接吻が叶うものなら、愛の兵団を率いて何者とも戦い、
身に百千の傷を帯びることも厭わないでしょう。
その有様は、かの領主と寸分の違いもなくなるのでしょう。

ですが、僕はあなたを摘み取りはいたしますまい。
求めすぎない、ということを知っているからです。

54 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2009/10/18(日) 04:59:38
人は常に何かを求める存在です。
五欲を去る、だの、煩悩を捨てる、だの、そんなことは誰にもできはしません。
自分全体の求めることはとても大切です。
ところが、「頭」だけで求めると、求めすぎてしまう。
「体」が求めることを「頭」は押しのけて別のものを求めてしまう。
しまいには余計なものまで求めてしまう。

しかし、これを抑えて求めないで済むことは求めなければ、
体の中にある命が動き出します。
それはよろこびに繋がっています。

今持っているものがいきいきとして、心が穏やかになります。
恐怖感が消え、時がゆっくりと流れ出します。
なんと、美しいことではありませんか。

この場所は、美しいままに生まれ変わることができます。
だから、それまで、僕は毎日ここを訪います。
遠くの山が薄紅色のヴェールで着飾る頃、ここを訪ね
ただあなたの前に座っています。
そうして夜空が月のペンダントで着飾る頃、おいとま致します。

55 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/19(月) 17:21:17
【テントウ虫 ララ】
(蔓薔薇と人間のやりとりを木陰窓の外から眺めながら)

まぁ! まぁ! まぁ!
紅薔薇を摘み取らない人間がいたとは!

生き血が匂い立つように生々しく、艶めかしく咲き誇る紅い蔓薔薇
天鵞絨のように重厚で触った者の手と心を捉えて離さない手触り
どんな悪夢もお伽噺のような夢に変えてしまう馨しい馨

細いあの首をちょきんとやって独り占めしたくなるような美しいさ

同じ紅でもわたしの赤とは違うのよ
(自分の赤いコートをくるりと回りつつ見回しながら)
私のは赤 あの方のは紅
文字に表現してもちょっと違うのだわ

56 名前: ◆O.CeiJNB63Sf :2009/10/19(月) 17:22:42
あの姿を見て、摘み取らない生き物がいたとはねぇ……これまでいろんな生き物が彼女を欲しがって
彼女に渇きを覚えて、狂わんばかりに切望し、彼女の容姿を褒めちぎったというのに!

ここを…この地を変える?
こんなことを言ったのも思ったのも、きっとあの人間が初めてだわ
マーリンに知らせたらなんて言うかしら

「この世界を変える? 刻を動かす? 美しいままに? たかが人間に……」
なんていつもの皮肉口調で言うに決まってるわ マーリンってば、端から見ていてうんざりするほどのペシミストなんだもの
でも、面白くなってきたわ もし、この人間がなにかお願いをしてきたなら、わたし、喜んで自分の躰より大きな木の葉も運んであげてしまうでしょうね
絶望に溺れるよりは足掻いたっていい、望みを持って上を向いているほうがいいもの
ふふっ 久しぶりに楽しくなってきたわ なんだかワルツでも踊りたくなってしまうくらい
脚も心もこんなに軽いのはいつ以来かしら

57 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2009/11/13(金) 16:48:43
sk2

58 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/01/08(金) 13:48:00
sk2!

59 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/01/19(火) 12:43:39
sk2!!

60 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/01/24(日) 00:23:16


61 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/01/27(水) 17:03:19


62 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/01/29(金) 01:07:54


63 名前:白牡丹 ◆Enju.swKJU :2010/02/05(金) 00:12:06
>>55-56
今日も僕は、ここを去る。
永遠の冬の国で、月の下で、誰と踊る──
冬は僕を優しく包み、微笑んでいる。無駄だよ、と言うかのように。
それでもここを訪れる。
何度日が沈み、月が昇っても。
「変わらないものはない」、と信じて。

僕はつくづく阿呆だと思う。
【冬の祠】が悲しい刻を雪で覆い隠すのは、ここがそれを望んでいるから。
変わることを望んでいないのに…?
僕なんかに、何がわかる…?
それでも、このままではいけないと思うのは、
僕が阿呆だからだろうか?
それなら、阿呆のままでいい。
ここが愛しい、蔓薔薇が愛しい、この世が愛しい、だから
悲しみの刻は過ぎ去らねば──

ああ、それでもなんと無力なことだろう!
今日も三日月が顔を出した。

蔓薔薇の君よ、それじゃあ、またね。
また明日も来るから、ごきげんよう。

…いったい、どれだけの時が通り過ぎただろう。
そうだ、世界樹に。
地球の諺の言うところには、「灯台もと暗し」とか。
全ての命の根源に繋がって、人の生み出した悲しみを克服できるよう祈ろうか。

【世界樹】

うねっているね。
はるか天上の極みから鳴り渡るような、人の心の内から響いてくるような、
音にならない無数の銀色の音色。鼓動。波動。
人間がこれを模して作りあげたのが、Hemy Sync 。
もちろん、本物の世界樹の波動には及ぶべくもないけれど。
悲しみ、喜び、感情は自分からほど遠いものに感じられる。
僕は今、何からも超越して、ただそこにある。

(後ろを振り返り)
てんとう虫さん、こんばんは。
初めまして。
あなたの息遣いが、このうねりを通して聞こえたものだから……。

ここで会ったのも何かの縁だ。
一期一会にも縁あり、このご縁もまた大事の大事。
少し、僕の話し相手になってもらえないかな。

64 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/04/30(金) 12:19:11
 

65 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2010/10/27(水) 03:27:39
   γ ⌒ヽ
  A(・ ェ ・ )з
  Υと   ヽ
    と⌒_)〜

66 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2011/04/02(土) 09:33:19.57
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/x3/1262784859/710-711

収め方が上手い。
ゲームを避けてスレッドに相応しい流れに戻そうとしたところを流れシカトしてまたゲームの話しだすのを押さえつつ
流れシカトのゲームバカに絡んだバカも押さえそのバカに絡んだゲームバカを再度押さえ収集。
この流れを見てまた荒れること言うのは最高おバカ。

67 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2011/04/02(土) 09:34:26.48
ちなみにこの↑レス見て荒らすのもまた愚の骨頂。

68 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2011/04/02(土) 09:37:14.86
ちなみにゲームバカはオレ。
言うまでもない。
どこのだれだかわかってるんだからw

69 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2011/04/02(土) 09:42:59.40
2chでいまさら個人情報がどうこうっていうのがバカらしい。
素直にネタな会話を楽しんでおけばいい。

電波板にしかこんなことは書けないというか、書かないけどね。

70 名前:名無しちゃん…電波届いた?:2011/04/02(土) 11:04:26.05
× どこのだれだかわかってるんだから
○ どこのだれだかわかってるということをわかってるんだから


戻る 電波・お花畑に戻る 全部 最新50
DAT2HTML 0.35f FIX Converted.